夷洲斎日乗   老読者の読書日記

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zoom RSS 同じ根から萌え出たので、同じ花が咲く

<<   作成日時 : 2012/09/07 18:27   >>

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 共和制と民主制を混同する輩が多すぎる。
 こんな風に「政局」で混乱した末に、何となく微温的、というか平凡な、というか「やっぱり」な決着がつく、というのが、「(戦後の)日本人」が選択した「民主」主義ってやつではないか。ナニを今更問題視しているんだろう。
 モンダイがあるとすれば、微温的で平凡な決着すらつかなくなっちまっているところで、コイズミ構造改革以来、その「民主」主義をあんまり弄繰り回しすぎた結果なのだろう。
 ……いっそ、議員の任期を終身にして、ムカシの参議に戻せばどうか。(失敗は、切腹するか殺されでもしなければ責任を取れなくするのである)それで、総理大臣だけはその中から国民投票で決めるというのは。あ、それじゃ共和国時代のローマか。
『秘密の武器』 コルタサル 木村榮一=訳 岩波文庫
 幻想短篇集、ではあるが、訳者が思う以上に〈SF的〉である。
「母の手紙」「女中勤め」の最初の二篇までは、まだいい。
 前者はジワジワとくるタイプの「怪談」である。故郷を遠く離れてしまった者にとって、かなり共感する部分のある(「あるある」とさえいえる)設定の中に、誰でもふとした拍子に心に浮かべてしまうだろう罪悪感が、少しずつ「生活」を侵食していく……トテモ日常的なサスペンスが巧みな短篇だ。
 後者は、これは一種の叙述トリックのミステリーだと考えると(かえって)わかり易い。そう思って読むと、ずいぶん色々なコトが読み取れるように書かれている。そして、その色々なコトの〈真相〉を推測した瞬間、〈位相〉が変わる。…何度でも言うが、「それこそ」がミステリーの基本要件だ。
 だが「悪魔の涎」は少し違った印象を受ける。
 1950年代に合衆国で盛んに書かれたSF短篇を彷彿とさせる。(実際年代的にはその辺りに書かれたらしい)シェクリイとかスタージョンが書いたと言われても、(訳し方によっては)信じるかもしれない。
 ある素人カメラマンが、街角で写真を撮る。その街角では、まさに美女が少年を誘惑しようとしているところだった。その瞬間を収めた一枚を、引き伸ばして仕事場の机の前に飾っていると、写真の中の人物たちや風景が動き出し、その瞬間、撮影者の方は永遠に停止した時間の中に閉じ込められる……という内容。
 かなり端折ったが、これだとまさにムカシのSF短篇そのものだ。
 何故そうなったのか。その鍵は、「訳者解説」にある。
 コルタサルが幼い頃、母やおばの影響で、19世紀の欧米のゴシック小説に親しんだ、という記述。
 SFの側からは異論が噴出するだろうが、「文学史」的に、特にウェルズをはじめとしたイギリスのSFは、ゴシック小説に系統の根を持っていることは疑い得ない。「フランケンシュタイン」「ドラキュラ」といった後期ゴシック小説の〈ランドマーク〉は、いずれもイギリスで生まれたことを思えば、この系統発生論は間違いではないはずだ。
 つまり、同じ根から萌え出たので、同じ花が咲いた、ということだ。土壌によって色が変わっているにしろ。
 そして、次の「追い求める男」は、なんとNW、である。
 外見は、ヤク中のサックス吹きの戯言に振り回される「伝記作者」という、これ以上無いほど俗っぽい内容なのだが、そのサックス奏者が追い求めている「何か」、がNW-SFそのものだ。
 サックスを吹いている時や地下鉄の中でふいに垣間見える「時間」の向こう側。
 その「ことば」では伝わらない「何か」を、小説で表現しようとする努力と、その努力の放棄……
 表題作「秘密の武器」も、「内面」の物語であることは間違いないが、これは(良く書かれてはいるが)普通の心理サスペンスである。ただ、記憶の混乱でヒロインの内部の「時間」が徐々に狂っていく過程が、ちょっとディック風ではある。

 何らのムーブメントとも関わり無く、ひとりでゴシック小説からSFの発展(?)史をなぞってきたかのような作家だとすら(少なくとも、この短篇集では)思える。
 もっとも、単なるSFマニアの「身びいき」だというご指摘があれば、それも甘んじて受けるつもりだ。
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