夷洲斎日乗   老読者の読書日記

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zoom RSS また夏が来て、溶ける

<<   作成日時 : 2012/09/11 20:18   >>

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 イラク代表監督のジーコを見ると、つい中日打撃コーチの星一徹を思い浮かべてしまう。サッカーで逆立ちしても意味無いが…いや、この場合は「OK、ボス」の方か。
 日本人の「物語」に刷り込まれた梶原イズム。ああ、恐ろしい。
『ディック短篇傑作選 トータル・リコール』 フィリップ・K・ディック 大森 望=編    
 ハヤカワ文庫SF
 毎度の事ながら、映画化の度に新しく短篇集を編んで出すハヤカワ商法(昔は、カバーを映画のスチール写真にするくらいだったのだが)ここまで来るといっそ潔い。いつものようにボーナス・トラックがあるので、買わずに済ますことも出来ない。
「トータル・リコール」がリメイクだというのが、ディックというSF作家の(現在における)位置が僅かながら窺い知れる。
 実際、今世紀に入ってからのTVのSF系ドラマじは、その複雑な初期設定、どんでん返しに次ぐどんでん返し、ちょっと破綻しても面白さ優先のプロット…つまりはディック的ということで、ソレがハリウッドにまで波及しているということでもある。
 今回、ディックこそがアメリカ的なSF作家であるという確信がさらに深まった。
 その「内容」だけではない。「外観」もこれ以上ないほど、(彼が生きていたのでは〈ない〉現代の)アメリカ的であるということが、この短篇集に納められたほとんどの短篇が証明している。
 もし、人間に記憶を植え付ける技術が確立されたら、アメリカではたちまちこの表題作のように「商品化」されるだろう。記憶だけでなく、「証拠の品」を用意するあたりが、まさにアメリカのサービス業の業態だ。
 またそれが、軍事(諜報)技術とバッティングする事態に陥るというのも、いかにも(現に)在り得る現象ではないか。
 ディックは、アメリカ的資本主義といったモノの〈本質〉を、どんな経済学者よりも深く鋭く直感していたのだ。
 それこそ、「記憶」や「時間」……「物語=歴史」という、ルネサンス以降の西洋文明では根源的に人間存在に付属するとされた…もっとはっきり言ってしまえば、「魂」が…「商品化」されるセカイ、それが「アメリカ合衆国」である、と。
 もちろん、声高に政治的な主張として語られているわけではない。だが、だからこそ〈本質的〉だともいえる。
〈未来の支払い不能性〉を担保に商品化した「サブプライム・ローン」であるとか、9.11を経て(そういえば、「今日」はあれから11年目だ)ディックの見た悪夢のセカイは徐々に具現化しつつある。
 良く考えてみれば、スマホなんてムカシのスパイ道具みたいじゃねえか。
 未来予測の技術(それが、ちょっと化けものじみた「プレコグ」になるというのが、ディックのオリジナリティだが)を使って犯罪を未然に防ぐ、というのも、他のどの国でも在り得なくとも、アメリカ合衆国ならあり得る。
 未だ犯罪を犯していない者を収監するなどというのは、現在まさに行われているではないか。
 こうした「不安」の形象こそ、今世紀に入ってからディック原作の映画が毎年のように造られる遠因である。
 SF作家の第一義的な役割…すなわち「予言者」(それも、「当たる」)としての役割だけを捉えているわけだ。
 だから、「マイノリティ・レポート」であり、「トータル・リコール」なわけで、『高い城の男』とか『ヴァリス』…は無理にしても『聖なる侵入』などの、真実(ほんとう)の代表作がなかなか映画化されない理由でもある。
 ぶっちゃけると、メリケンはディック(という幅の広い作家)の都合のいいところしか見ていないっていうことである。
 まあ、その点は日本人も(ドラッグとかポップ・カルチャーとかの偏狭な視点)同罪なのだが。


トータル・リコール (ディック短篇傑作選)
早川書房
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