夷洲斎日乗   老読者の読書日記

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zoom RSS 暑熱地獄も彼岸過迄

<<   作成日時 : 2012/09/23 21:35   >>

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 文化庁がまとめた「国語に関する世論調査」…
 まあ、我が「お上」の国語政策は、明治以来何時も少しピントが外れていて、苦笑なしには見られないシロモノではあるが、今回も言葉の誤用についてはネット上の日本語運用…誤用がそのまま(うpする、とかな)分かっていてわざと使われるような状況にまでは言及していない。(もしそこまで踏み込んだら「逆に」驚くが)
 基本的に、生きた言語というのは誤用や言い間違い、果ては逆さ言葉の方が「正解」として通用するようになるなど、平安の昔からそうやって変化し続けているわけで、意味が通じればどっちでもいいようなものだ。
「にやける」を薄笑いと捉えるのは「ニヤつく」と混同しているのだろう。(「正しい」意味を「にやける」、と形容動詞として使うのも現在では珍しくて、「にやけ(た)男」という具合に形容詞として使うのが実は「正しい」使用例、という気もするが)
「口先三寸」は論理的に考えればおかしいことはすぐ分かるはずだ。口先が三寸もあるなら、そりゃあくちばしだ。もっとも、「三寸」が実感を伴った長さではないせいもあるのだろうし、「口先だけ」とかいう言い方と自然に混ざったとも考えられる。
「終り」を「終わり」と表記するのも、現在ではどちらでも構わない(両方変換される)となっているように、いずれは正誤ではなく使用者の選択、というトコロに落ち着く気がする言葉遣いばかりだ。
『折口信夫芸能論集』 折口信夫 安藤礼二=編 講談社文芸文庫
 まあそれも、「日常」で話されたり書かれたりする範囲内でのことで、少なくとも「公」に公表された文書(ブログとかツイッターとかはとても微妙な線だが)でそうなのはさすがに使用者の「見識」が問われるところだ。(「逆に」言えば、それだけの「意味」しかない)
 実はこの折口信夫の論集にも、現代では読み難い言葉遣いや漢字の読みがコレでもかと言う程出てくる。時には、自作の言い回しや当て字もあるし、その辺の自由闊達さは学者というより、文芸者の姿そのものである。
 特に、この最終巻は「芸能論」だから、学者というより文芸者、ゲージュツ家の顔をより多くさらけ出している。
 何しろ、草深い山奥の村に残されたある「芸能」に対する折口の〈視線〉は、学者による「分析」というより、やはりゲージュツ家による「鑑賞」の態度だと感じる。式次第の構成等の「分析」もちゃんと行いながら、やはり深いところではその構成の「美」を「鑑賞」しているように感ずる。
 そこが、折口信夫の……というより、〈民俗学〉という学問の長所でもあり、短所でもあるトコロだ。
 有名なマレビト論にしても、学問上の「正誤」などは実は何も「証明」されてはいない。ゲージュツ家折口の(妖しい美的)直感に拠るところが大である。しかも、それを「表現」するのに、文芸者としての「感性」と「技法」を躊躇い無く傾注する。(柳田にも文芸者としての魂はあったが、学者としてはそれを抑制することを選んだ、と見る)
 折口の説く「民俗」も「芸能」も、あえかな美しさを土中の宝石の如く隠したナニカ(神、と、もちろん、一神教の神とは別物だが、言ってしまってもいい)を、様々な角度から「眺める」ためにのみ存在している。
 その、ある意味ねちっこい、舐めるような鑑賞態度が、受け付けない者にはある種「ぐろてすく」にさえ見えることも否めないのである。
(折口においては)あらゆる言葉は、その眼に見えないナニカを「現前」とまでいかなくとも、読者のココロに仄かに浮かべるためにこそ存在している。…だから、言葉としての、または学問としての「正誤」など、どれほどの意味も持たないのである。
 こんな妖しい(鵺的な)ヒトが重要な位置を占める〈民俗学〉という学問が、だからこそ、敢えて今日意味を持つのも、その「正誤」で把握しきれない曖昧な、だがその奥に確実に「ある」と直感できるナニカ、効率と経済性を神の如く崇める(そのくせ、「論理」は恣意的に運用される)現在(いま)の日本社会では失われて久しい、妖しくも美しいナニカが、やはりココロの奥のどこかで渇望されているためではないか、そんな気がするのである。
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