夷洲斎日乗   老読者の読書日記

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zoom RSS 霜月朔日では早すぎる

<<   作成日時 : 2012/11/05 22:59   >>

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 長らくログインできなかったが、ようやく今日から復旧したようだ。11月1日に書いたものをUPする。

 今年もあと二ヶ月、どうも選挙はなさそうだし(東京都の方はご苦労様です)予想されたような慌しさは回避されそうだ。先に延びただけなんだけど。与党野党第三極と、日本のセージのコレジャナイ感が日毎に強まっている。不安と言えば不安だが、笑えると思うと笑える気もする。今日は神様(たち)が出雲から戻って来る日だが、どーなるか。
『天体による永遠』 オーギュスト・ブランキ 浜本正文=訳 岩波文庫
 三重の意味での「珍」なる本。
 一つは、革命家として有名なあの「ブランキ」が書いた天文学の本であること。
 二つは、雁思社という、名古屋の出版社から出た翻訳本の文庫化であるということ。
 三つ目は、「天文学」の本だから本来「青」帯のはずなのに「白」帯で出ていると言うこと。
 こういうことを言うと己の教養のなさを露呈するようでナンだが、ブランキというヒトも知っているのは名前くらいで、それもパリ・コミューンの本で見かけた程度である。(何と言う題名の本だったかも忘れている)
 内容についていえば、著者の名前を知らなければ、19世紀に書かれた天文学の本以外の何物でもない。(実際の観測に基づいた研究書ではないが、(当時の)知見に基づいた考察の書ではある)
 現在知られている最新の知見に較べれば、もちろん誤りというか、謬見はあるが(特に恒星間の距離など数値関係)それはこの場合ほとんど意味はない。たとえ2012年現在の最新の天文学的知識を知っていたとしても、ブランキの書こうとする論旨に変わりはないだろうと思われるからだ。
 宇宙は完全に物理(物質)的な要件で成立していて、そこに何者であろうと「意思」は介在しない。人間には認識も不可能な〈無限〉の空間で、生成と消滅のサイクルを永遠に(そうではない、という説も、最近ではあるが)繰り返すだけである。
 なるほど、ニーチェの「永劫回帰」の宇宙版とでもいった趣だ。(断っておくと、この本はニーチェが登場する「前に」書かれた)
 ブランキの宇宙観(セカイ観と言い換えても同じだが)には創造神の意志も、被造物の反抗も、つまり「ドラマ」は存在しない。
 19世紀のフランス、動乱とドラマの只中にいた人物のセカイ観がここまで「非情な」モノであるという驚きがある。
 それと同時に、SF者としては、これこそ究極のSF的な思考過程だという……予感めいたものが走るのを禁じ得ない。
 政治も経済も社会も、人間の営為のスベテが相対化し、何となれば卑小なものとなり、「無意味」となる、そんなヴィジョン。
 投獄された要塞刑務所で書かれたという背景すら、この書物の(真実の)価値には何の意味も持たない。
 革命家としてのブランキの研究者に、この本がまったく無視されて埋もれていたのもある意味当然で、先のブルガーコフの如く、これは未来に向けて書かれた本でもあると思う。最後の著作であるという事実が、ソレを間接的に示してもいるし。
 宇宙が、セカイがヒトの思いとはまったく無関係であるという「事実」は、ある意味究極の「絶望」である。
 その「絶望」のヴィジョンを真実として認識しながら、政治・経済・社会的存在としての自己はどのように「生きる」のか。
「オーギュスト・ブランキ」という人物が革命家として生きたということ自体が、その答えなのではないだろうか。
 毀誉褒貶の狭間にあり、山師とも革命家とも、陰謀家とも目されている人物の底に、ある意味「壮大なペシミズム」「究極のセカイ認知」が潜んでいたという意外な事実を知ることが出来ただけでも、この岩波文庫には値段以上の価値があったと言える。
天体による永遠 (岩波文庫)
岩波書店
オーギュスト・ブランキ

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