夷洲斎日乗   老読者の読書日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 「セカイ」のこと

<<   作成日時 : 2012/11/10 22:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 オバマ再選で、アメリカ合衆国は「世界標準」な社会……中流の下を基準にした社会を取り敢えず選択したようだ。「リベラル」というのはつまりそういうことだろう。アメリカがあまりに「面白い」国だとセカイは間違いなく混沌化する。ごく「普通」のツマラナさを選択するということは、「アメリカ人」も(まだ)捨てたものではないということか。
 ただ、更に大きな「混乱」(暗殺とか、もっと酷ければ内戦とか)が起こる可能性も、「あの人工国家」は秘めているから、油断はできないが。
『フェッセンデンの宇宙』 エドモンド・ハミルトン 中村 融=編訳 河出文庫
 SF、特にSF史を語る際に、アメリカという「国」についてを外すわけにはいかない。何と言ってもこのジャンルがここまで隆盛したのは20世紀中盤のアメリカで、である。
 ヴェルヌの科学的(最新(あるいは擬似的)テクノロジーによる)冒険小説と、ウェルズの文明批評的な科学的小説、この二つのイイトコ取りをしたのが、アメリカSFだということもできる。
 この(ヨーロッパの)イイトコ取りというのが現在でも続くアメリカという国の政治・経済・文化の基本的形態だが、ソコからそれぞれの局面で「新しい」モノが生み出されたのも間違いない。
「フェッセンデンの宇宙」は、SFの読者としてちょっと古い履歴を持っていれば、最も「衝撃」を受けたSF短篇として必ず挙げるはずの小説だろう。
 ミニチュアの(実験室の中の)人工宇宙(それは、宇宙としてのスベテを備えた本物の宇宙だ)というこのアイディアひとつだけでも、ハミルトンは文芸人として永遠に残ることは間違いないくらいの価値があるが、何といってもこの短篇のオチが重要なのだ。語り手が最後に陥る不安、「この宇宙」も、もしかしたら誰かが実験室で創ったものではないか、という何とも居心地の悪いカンジ……この、セカイを丸ごと相対化する感覚こそが、〈SF〉の真髄であると思えるのだが、どうだろうか。
 個人的なコトを言えば、この短篇を初めて読んだ時の状況がありありと思い出される。小学生の頃、友人の家で見つけた古い雑誌を、夕暮が近づいてその家で夕飯を作る匂いが漂い始めるまで読み耽った時の記憶が、未だにはっきりと残っている。
 それくらい「衝撃的」な短篇小説だったということだ。それを読んだ時の周りの状況さえ思い出せる小説は五指に満たないのだから。
 だが、長い間、その小説を書いたのが『キャプテン・フューチャー』と同じ作者だとは気づかなかったという記憶もある。
 もっとも、先年創元文庫からでた『全集』を読んだ時に感じたのは、この有名なスペース・オペラのシリーズでも、実は根底に地球人を含む太陽系人たちが他の銀河からやって来て、孤立・衰退した種族であるといった設定で「相対化」の原理が貫かれている、ということだ。
「向こうはどんなところだい?」や「太陽の炎」が、宇宙やロケットの冒険活劇を愉しむノーテンキな典型的「SFファン」たちへの、半ば嫌がらせに近い小説なのも、ハミルトンの文芸人としての矜持が垣間見える。
「翼をもつ男」のアイロニー(きっかけは、比喩的言説の「現実化」であるにしても)や今回文庫化にさいして付け加えられた「世界の外のはたごや」の、セカイの相対化の果てにある絶望感と、その絶望に現実としていかに対処するかというトコロまで踏み込んだ短篇、そして「夢見る者の世界」が、ヒロイック・ファンタジーというジャンルへのオブジェクションであることも含めて、この作家の「性質」というか、その書くヒトとしての本質が垣間見える良いオリジナル短篇集だ。
 それに、この文庫版では「フェッセンデンの宇宙」のオリジナルと改稿版の両方が入っている。……単行本を読んだ人でも、絶対「買い」だ。
フェッセンデンの宇宙 (河出文庫)
河出書房新社
エドモンド・ハミルトン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by フェッセンデンの宇宙 (河出文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「セカイ」のこと 夷洲斎日乗   老読者の読書日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる