| タイトル |
日 時 |
時には本の無い子のように
GWも終わりました。
当方は、今年は読書予定が順調、とはいかなかったのですが、皆さんはいかがでしたでしょうか。
『なぜ古典を読むのか』 イタロ・カルヴィーノ 須賀敦子=訳 河出文庫
なぜと言われましても…
思い返せば、そう自慢できるほど「古典」の読書量はない。なかった。
20代の、貪るように本を読んでいた時期ですら、〈ミステリーの古典〉や〈SFの古典〉は読んだ気がするが、この本でいうところの(それでも、あの、カルヴィーノだからかなり〈自由〉度は高い)「古典」はほんの数えるほど...
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2012/05/08 20:51 |
明日という字は明るい日と書くのね
この世のあらゆる文芸のうちで、〈死者との対話〉ほど基本的なものはない。
〔歴史小説〕というのはジャンル自体がそうだ。
〔ミステリー〕も、煎じ詰めればそういうことになる。
じゃあ、〔SF〕はどうか、といえば、少なくとも日本では、その文芸の基本を蔑ろにはしていない。
日本のSFにも幾つかの主要な流れはあるが、小松左京…山田正紀…神林長平…そして伊藤計劃(もちろん、これは酷く大雑把で穴だらけの〈系譜〉だが)というラインを(小説自体の連続性ということでは、無論無い)思い浮かべた時に、「(本...
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2012/05/05 20:43 |
汝、境界線で輝ける星よ
長い経験からすると、良い本というのは、読み終えるのがもったいなく感じながら(逆に)一気に読んでしまう本をいうのだと、自分では思っている。本当ならもう少し時間をかけて読み終えるつもりだったが、実にあっけなく読み終えてしまった…
『奇跡なす者たち』 ジャック・ヴァンス 浅倉久志=編訳 酒井昭伸=訳 国書刊行会
〈未来の文学〉も第三期に入って、とりあえずここまでは順調そうだ。
故・浅倉久志の編による、このジャック・ヴァンスのオリジナル短篇集は、相当に格調高いモノになっている。(格調とか、あま...
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2012/04/28 20:29 |
書かざるを得ないとき
ヒトが文字を連ねて何事かを表現するのは、本当に、何故なのだろう。
『祭の夜』 パヴェーゼ 河島英昭=訳 岩波文庫
前の月に同じ岩波文庫から『流刑』という長編が出ていたが、それは買わず、こちらを先に読んだのは、ひとえにカバーに書かれた「カルヴィーノが遺稿から編集した」という惹句のせいである。
カルヴィーノより一つ前の世代の現代イタリア作家。
ファシスト政権によって逮捕され、〈流刑〉の憂き目に遭ったブンガク者。なにか、こう、思わず構えてしまうものがある。
しかし、読み始めると、そ...
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2012/04/27 18:25 |
文字の果てに
今日は生憎の雨だが、春は読書には良い季節だ。
『岸田國士III 沢氏の二人娘/歳月/風俗時評 ほか』 岸田國士 ハヤカワ演劇文庫
好きな作家である久生十蘭の(事実上のw)師であるという理由で読み始めたこの劇作家の戯曲集も、とうとう三冊目に突入した。(そういう読み方をする読者が、どれだけいるかはわからないが)
この巻では、「風俗時評」という脚本があるように、いわゆる〈時局〉ネタが多い構成。戦時中の移動演劇のための「かへらじと」も含めて。
「かへらじと」を読むと、ああ、確かに久生十蘭の...
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2012/04/14 22:55 |
〈通念〉の時代変化(ミステリーにとっての自縄自縛)
そして春が来て、あの禍々しいソメイヨシノの花も散った。
東京へ来て、あの実をつけないサクラの、狂ったように咲く様は何だか毎年薄気味が悪いカンジがしていた。(今でもしている)
品種改良があながち悪いこととは言わないが、アレだけは“不自然”過ぎる。しかも、それをこの巨大都市の人々は、さほど“不自然”とも感じていはいないらしい。
『蝋人形館の殺人』 ジョン・ディクスン・カー 和爾桃子=訳 創元推理文庫
まもなく書かれて百年を迎える本でも、その“いのち”の在り様はそれぞれに違っている。
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2012/04/13 22:48 |
もし明日も本を読むことができるのなら
大昔は、人頭税というとんでもない税金がありましてな。
これは、生きている、つまり〈存在している〉ことそのものに掛るという、いわば究極の税であります。
消費税というのは、実は税金の種別としてはこの流れを汲むもので、卑しくも資本主義体制化で〈生きて〉いる限り、必ず払わされるという究極の税金システム。この人頭税というのは、明らかに〈民主主義〉とは相反する税、国権というモノの最悪の発現だと習ったはずだが、はて……。エライ経済学のセンセイ達は何故そのことを(特にサヨクの方々)黙っているのか、フシ...
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2012/03/31 10:06 |
短篇小説の〈機能〉について(あるいは〈機能〉などないということについて)
ナンダカンダいって、まあ春と言い張れる気候である。自然というのは、こちらの思いや都合とは無関係に、ただそこに存在しているだけであるという単純な事実が、こうした季節の変わり目には嫌でも思い知らされる。日本人の〈季節感〉の根っこにはそうした事実の毎年の集積があるような気がしてならない。
『六つの手掛り』 乾くるみ 双葉文庫
主人公(探偵役)の名前が林茶父(さぶ)という時点で、ブラウン(茶)神父を意識したということは一目瞭然なわけで(解説でもネタばらしはあるしな)おまけにちゃんとビジュアルでも...
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2012/03/25 21:02 |
相乗的効果(全然チガウトコロに到達する)
ドコトナク不穏な日々だ。また地震が多くなっているし。
そろそろ緊張感が抜けてきたところで一撃が来るというのは歴史以前からのパターンだ。(とくにわが祖国では)
油断はしないようにしたいものである。
『ベスト・オブ映画欠席裁判』 町山智浩・柳下毅一郎 文春文庫
『神話の力』 ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ 飛田茂雄=訳 ハヤカワ文庫NF
わざわざ一緒にしたのは、この二冊には〈共通点〉があるからだ。
対談(または対話)集という共通点が。
それかあらぬか、二冊ともかな...
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2012/03/17 03:59 |
366日後
いまでも、震災や原発事故について何事か書こうとすると、ひどく微妙な気分になる。「歴史」というには生々しく、「体験」と呼ぶには遠い。
気にせずに生きるには重いが、いつも頭の中に在るというと(少なくとも、当方の如き非被災者などにとっては)嘘になる。
それについての感慨などもネット空間には溢れているだろうが、このブログはたかが一読者の読書日記である。そこまで踏み込んで書くことも特に無い。
『ルネサンスの神秘思想』 伊藤博明 講談社学術文庫
〈事象〉という言葉も、去年変な使われ方をしたせい...
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2012/03/11 09:48 |
光の春
気温は極寒でも、陽は高くなって、晴れるとその光は眩しい。
こういう状態を、〈光の春〉というそうだ。何処で読んだのかはわすれたが…
『前日島(上・下)』 ウンベルト・エーコ 藤村昌昭=訳 文春文庫
何故かまた上・下巻の本に手を出す。そうはいっても、エーコは文庫になると必ず上・下巻になる。デフォルトだ。
元来学者だし、書きたいと思ったから書いているという、自分の思いだけで書くのに、これ以上の状態はないという作者だが、それで面白さが減ずるというわけでもないのが〈小説〉というやつの不思議...
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2012/02/18 19:45 |
ノベルスなのに携帯し難い本(しかも上下巻)
祝日が土曜に重なるのは、昔は嬉しかったものだ。
振り替え休日がいい制度かどうかは疑問だが、土曜日に祝日が重なった時の〈お得感〉が180度変わったのは確かなことである。
『暗黒館の殺人 (上・下)』 綾辻行人 講談社ノベルス
2月は大部の本を読むのに、感覚的に丁度良い気が以前からしていた。
この月の、中途半端さが、〈ぶっとい本〉を詠むのに逆に適している。
思えば、『虚無への供物』とか『匣の中の失楽』とかいったブ厚いミステリーは、皆2月に読んだ。
に、しても、歳を感じずにはい...
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2012/02/11 15:47 |
節分
立春イヴだから、今夜が冬の最後の夜。実感としてはそんな気配は全くないが。
2月という月の、何とも言い難い中途半端さもあるし。
『芭蕉庵桃青』 中山義秀 中公文庫
前回に続き、これもその作家の「遺作」だ。別に意図したわけではないのだが、何気なく読書しているとこういうことが割に煩瑣に起こるから不思議である。
松尾芭蕉……その存在は確かに誰でも知っているし、「俳句」という形式の〈詩〉の完成者であることくらいはほぼ確実にデフォルトの知識だろうが、その人物について詳しく知るところがあまりに...
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2012/02/03 20:55 |
〈不安〉が不安、ということ
北国出身なら身をもって知っていると思うが、晴れた日は放射冷却でとてつもなく冷える。まだ雪でも降った方が実は気温的にはましだ。
今日は長くなるので、前置きはこのくらいで。
『ハーモニー』 田中計劃 ハヤカワ文庫JA
ようやく読んだ。基本的に長篇は「メタルギア」のノベライズも含めて三冊しかないので、読むのがもったいない気がしてペンディングしていたのだが、あまり時を開けても読書時におけるナニかが薄れる。まあ、このあたりだろう。
三冊のうちでは、〈最も〉SFである。
カタチの上ではな...
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2012/01/28 21:55 |
冬の眠り、春の目覚め
季節は匂いでわかる。
冬には冬の匂いが、春には春の匂いがある。今日の雨は、その奥に春の匂いがした。気温がいかに低かろうと、顔に当たる横殴りの雨がどれほど冷たかろうと、その奥に春の匂いがすれば、それはもう春の雨だ。
『ラピスラズリ』 山尾悠子 ちくま文庫
出版不況がどれだけ続こうとも、いつかはこうして山尾悠子の〈文庫〉が読める。漁読者の至福である。
幻想文学、といまでは呼ばれ、その評価がどこか彼方にある、われわれのあずかり知らぬところで既に定まってしまっているのかもしれないが、わた...
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2012/01/23 21:42 |
恐怖の背景
ナニが怖いのか、ということほど、それぞれに差異がある事柄はないのだろうが、それにしてもこの
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』 ブラックウッド 南條竹則=訳 古典新訳文庫
にはあまりノれなかったのは何故なのだろうか。
もちろん、百年以上前の、それも外国作家のホラーに無条件でノれるはずもないのだが、今回、あまりにも「恐怖」という感情の齟齬を感じてしまっているのは、本当に何故なのだろうか。
「面白い」と思った短篇(例えば「スミスの滅亡」)も、「怖い」というのとはちょっと違う。
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2012/01/16 22:21 |
うるう年
だったんだよな、考えてみれば。
オリンピックとアメリカ大統領選挙がある。どっちも、いまとなっては微妙に空虚なイベントだが…
『都市と都市』 チャイナ・ミエヴィル 日暮雅通=訳 ハヤカワ文庫SF
「ヒューゴー賞」「幻想文学大賞」「ローカス賞」「クラーク賞」「英国SF協会賞」受賞、とある。
欧米の主要なSF・ファンタジーの賞を総なめである。
しかしながら、一般読者が構えて読むほど〈特殊〉な内容では、実はない。
冒頭、若い女性の他殺死体が発見され、刑事たちが到着するシーンから始...
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2012/01/11 23:26 |
正月気分
多少なりとも「正月気分」という感じになるために。つまり、昔の「スターかくし芸大会」でも見るような塩梅で……
『沙高楼綺譚』 浅田次郎 文春文庫
『草原よりの使者 沙高楼綺譚』 浅田次郎 文春文庫
浅田次郎、というとどうしても『鉄道員』とか『壬生義士伝』とか、映画化された小説の作者というイメージが強くて、これまで自分には縁のないものと思い込んできたふしがある。
だが、これはそんなイメージを覆すに充分な連作短篇集だった。
まず、設定が(私にとっては)とても魅力的なものであるのがひと...
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2012/01/07 21:38 |
謹賀新年
明けまして……めでたいかどうかは微妙。
予想通り特にリセット感も無く、いつのまにか新年となっていた。
まだ放射能は出続けているわけだし、元日一発目から(関東は)震度4の年賀を喰らう有様。私の陋屋アパートも結構揺れ申した。
『アースバウンド ―地縛霊―』 リチャード・マシスン 尾之上浩司=訳 ハヤカワ文庫NV
昨年、いや、もう一昨年になったが、その年末に買ったままになっていた本。
マシスンといえばSFというより、ホラーで(たぶん本国でも)有名だが、その老大家が80年代に書い...
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2012/01/03 21:42 |
2011年の挑戦
こんな浮草暮らしでも、年末は何かと慌しく、読書もなかなか進まない。
一週間ぶりのご無沙汰でした。
日本人は、新しい年が来るとわけもなく前年がリセットされるような気分になるのだが、今年はなんだか様子が違う。
思うに、さすがに2011年はリセットしきれないと皆感じているのではないか。
つまり、年末年始というのは「気分」だけで、何ら実質はない、ということだ。
それはともかくとして……
『岸田國士 II 古い玩具/チロルの秋/牛山ホテル ほか」 岸田國士 ハヤカワ演劇文庫
ま...
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2011/12/30 18:07 |