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日 時 |
〈不安〉が不安、ということ
北国出身なら身をもって知っていると思うが、晴れた日は放射冷却でとてつもなく冷える。まだ雪でも降った方が実は気温的にはましだ。
今日は長くなるので、前置きはこのくらいで。
『ハーモニー』 田中計劃 ハヤカワ文庫JA
ようやく読んだ。基本的に長篇は「メタルギア」のノベライズも含めて三冊しかないので、読むのがもったいない気がしてペンディングしていたのだが、あまり時を開けても読書時におけるナニかが薄れる。まあ、このあたりだろう。
三冊のうちでは、〈最も〉SFである。
カタチの上ではな...
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2012/01/28 21:55 |
冬の眠り、春の目覚め
季節は匂いでわかる。
冬には冬の匂いが、春には春の匂いがある。今日の雨は、その奥に春の匂いがした。気温がいかに低かろうと、顔に当たる横殴りの雨がどれほど冷たかろうと、その奥に春の匂いがすれば、それはもう春の雨だ。
『ラピスラズリ』 山尾悠子 ちくま文庫
出版不況がどれだけ続こうとも、いつかはこうして山尾悠子の〈文庫〉が読める。漁読者の至福である。
幻想文学、といまでは呼ばれ、その評価がどこか彼方にある、われわれのあずかり知らぬところで既に定まってしまっているのかもしれないが、わた...
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2012/01/23 21:42 |
恐怖の背景
ナニが怖いのか、ということほど、それぞれに差異がある事柄はないのだろうが、それにしてもこの
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』 ブラックウッド 南條竹則=訳 古典新訳文庫
にはあまりノれなかったのは何故なのだろうか。
もちろん、百年以上前の、それも外国作家のホラーに無条件でノれるはずもないのだが、今回、あまりにも「恐怖」という感情の齟齬を感じてしまっているのは、本当に何故なのだろうか。
「面白い」と思った短篇(例えば「スミスの滅亡」)も、「怖い」というのとはちょっと違う。
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2012/01/16 22:21 |
うるう年
だったんだよな、考えてみれば。
オリンピックとアメリカ大統領選挙がある。どっちも、いまとなっては微妙に空虚なイベントだが…
『都市と都市』 チャイナ・ミエヴィル 日暮雅通=訳 ハヤカワ文庫SF
「ヒューゴー賞」「幻想文学大賞」「ローカス賞」「クラーク賞」「英国SF協会賞」受賞、とある。
欧米の主要なSF・ファンタジーの賞を総なめである。
しかしながら、一般読者が構えて読むほど〈特殊〉な内容では、実はない。
冒頭、若い女性の他殺死体が発見され、刑事たちが到着するシーンから始...
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2012/01/11 23:26 |
正月気分
多少なりとも「正月気分」という感じになるために。つまり、昔の「スターかくし芸大会」でも見るような塩梅で……
『沙高楼綺譚』 浅田次郎 文春文庫
『草原よりの使者 沙高楼綺譚』 浅田次郎 文春文庫
浅田次郎、というとどうしても『鉄道員』とか『壬生義士伝』とか、映画化された小説の作者というイメージが強くて、これまで自分には縁のないものと思い込んできたふしがある。
だが、これはそんなイメージを覆すに充分な連作短篇集だった。
まず、設定が(私にとっては)とても魅力的なものであるのがひと...
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2012/01/07 21:38 |
謹賀新年
明けまして……めでたいかどうかは微妙。
予想通り特にリセット感も無く、いつのまにか新年となっていた。
まだ放射能は出続けているわけだし、元日一発目から(関東は)震度4の年賀を喰らう有様。私の陋屋アパートも結構揺れ申した。
『アースバウンド ―地縛霊―』 リチャード・マシスン 尾之上浩司=訳 ハヤカワ文庫NV
昨年、いや、もう一昨年になったが、その年末に買ったままになっていた本。
マシスンといえばSFというより、ホラーで(たぶん本国でも)有名だが、その老大家が80年代に書い...
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2012/01/03 21:42 |
2011年の挑戦
こんな浮草暮らしでも、年末は何かと慌しく、読書もなかなか進まない。
一週間ぶりのご無沙汰でした。
日本人は、新しい年が来るとわけもなく前年がリセットされるような気分になるのだが、今年はなんだか様子が違う。
思うに、さすがに2011年はリセットしきれないと皆感じているのではないか。
つまり、年末年始というのは「気分」だけで、何ら実質はない、ということだ。
それはともかくとして……
『岸田國士 II 古い玩具/チロルの秋/牛山ホテル ほか」 岸田國士 ハヤカワ演劇文庫
ま...
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2011/12/30 18:07 |
クリスマスシーズンの読書
ま、そんなことを気にして本を読むことはあんまりないわけだが。
「今年」は一応、100年くらいは語り継がれるだろう年になってしまったわけだし、そんな企画を立てるのも悪くはない、気がする。
『ハローサマー、グッドバイ』 マイクル・コニイ 山岸 真=訳 河出文庫
夏の青春SFなのに、と古いSFファンは感ずるかもしれないが……ダイジョウブ、ちゃんとわけは書く。
このブログでも度々言及する、サンリオSF文庫版の新訳である。
甘酸っぱい青春SF、というざっくりとした「ラベル」は記憶していた...
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2011/12/23 21:10 |
この年の瀬に、なんか大きなニュース
将軍様の死、か。今後どうなりますか。
『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』 スティーヴンソン 高松雄一・高松禎子=訳 岩波文庫
スティーヴンソンといえばまず『宝島』だし、『ジキルとハイド』だろう。それらの長篇は、いってみれば19世紀イギリス的な、つまりは「長篇小説」というもののスタンダードな形を(現在でも)示しているモノである。
これが、本書の如き「短篇小説」となると、まったく様相は異なる。
日本語で書くと同じ「小説」なのだが、長篇と短篇は、実はまったく別物なのだということが、良くわ...
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2011/12/19 22:09 |
下っ端外交官(と書いてトカゲの尻尾と読む)の大冒険
『天皇(エンペラドール)の密使』 丹羽昌一 文春文庫
他でもなく、このあいだ読んだ『パンチョ・ビリャの罠』から、少し〈メキシコ革命〉について興味が湧いてきた。
対中南米政策こそ、〈アメリカ合衆国〉の暗部である。現在の日本が、アメリカの半ば属国状態であるなどというのは、20世紀初頭のメキシコに較べれば可愛いくらいのものだ、ということが、こういう本からも少しずつわかって来る。
現在のアメリカの南西部の大半は、メキシコから様々な形で〈奪った〉土地である。ロス・アンジェルスとか、サン・フラン...
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2011/12/16 23:12 |
冬は怪談の季節
なのがグローバル的にスタンダード、な気がする。
『首ざぶとん』 朱雀門 出 角川ホラー文庫
真冬の読書はさすがに年齢的にきつくなってきたが、12月に入ってから読んだ本の中では、コレが一番、良い読書だった気がする。
4篇の、中編集(長さはマチマチだが)で、一応毎回登場するキャラが同じ。
この作者の良い部分、それは一種凄みを感じるほどの「普通」さだ。
登場人物がごく普通の名で、ごく普通のキャラクターであること。
それが、この怪談連作では〈必須〉な条件である。
シリーズ・キ...
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2011/12/13 21:39 |
11月の落穂拾い
『不連続の世界』 恩田 陸 幻冬舎文庫
ミステリーというよりは「怪談」だ。だが、ソレがいい。最後の短編がまた…何というか純文学という感じではないですか。ミステリーとファンタジーでいえば、後者寄りなところが恩田はんの特徴だとよくわかる短篇集。
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2011/12/06 21:48 |
氷雨というのは(身体的な)実感があるいい日本語だ
『パラダイス・モーテル』 エリック・マコーマック 増田まもる=訳 創元ライブラリ
……短篇集『隠し部屋を査察して』が良かったので(かなりSF寄りの短篇もあったことだし)期待値は自動的に上がる。
それにしても、作中で少し出てくるが、場合によっては少し古臭く見えるほど端正な小説である。
語り手の少年時代、長く失踪していた祖父が突然帰還して、死ぬまでの一週間に、それまで顔を見たこともない孫に自分の体験談を語る。様々な土地へ行き、様々な体験を語る祖父の「はなし」の中で、最も印象に残ったのは、...
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2011/12/03 23:06 |
酒呑んで暴言なう
また「不適切発言」だ。
発言の内容について言えば、そりゃあ不適切だろう。何かバカっぽいし。居酒屋で、嫌な上司の愚痴とかならともかく、おのれの職のデリケートな部分を話題にするというのも、社会人としてどうなの、という気もする。
しかし、前の「死の町」発言と較べても、どうも「公私」の境界線が薄れているという印象が強まる。私的な発言なり思想信条なりで公的な責任を取らされるとなると、ディストピア小説に良くある、相互監視社会が出来上がってしまっているという感じが否めない。
良く考えると、そっち...
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2011/11/30 23:21 |
叙事詩と鎮魂
『平家物語の読み方』 兵藤裕己 ちくま学芸文庫
来年の大河ドラマが、「平清盛」であることと、この本の出版のタイミングはたぶん無関係ではない……
学校で(ごくザックリとではあるが)習うし、出来るだけ資料に則って“史実どおりに”書かれた歴史小説もあることだし、現代の日本人にある程度の「歴史感覚」が身に付いていると考えても無理はないのだろう、とは思う。
でも、それは真実に公平な視点だろうか。
歴史的な公平さなどは、「歴史を持つ」つまり「文明化された」国なり民族なりの社会集団に属した者に...
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2011/11/27 22:02 |
SF的〈感性〉の例示(それを己の老父母に説明して納得させるコト)
『冷たい方程式』 トム・ゴドウィン他 伊藤典夫=編訳 ハヤカワ文庫SF
旧版から2篇残し、7篇は入れ替え。
比較のため旧版を探したのだが、大震災以降場所が変わったせいで発見できず。
もっとも、高名な表題作を読むため、がほとんどを占めるアンソロジーだから、無理に探さなくともいいかも知れない。
「冷たい方程式」
今回は、昔感じたような「非情さ」(ある意味、SFの少年読者が求める「カッコ良さ」)は後景に退いた気がする。
それよりは、「無知が死に至る罪で在り得る状況」という基本設定...
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2011/11/24 22:57 |
昨日と明日の違い
『およね平吉時穴道行』 半村 良 角川文庫
たとえば昔を懐かしむとしても、「昭和」という時代はただ思い出すだけでは足りない。
この短篇集を現在(いま)読むと、(小説のあるいは時代の)リアリティというモノについて考えざるを得なくなる。リアルという「感覚」について、と言い直してもいいが…
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2011/11/21 23:28 |
“リアル”の分かれ目
復興より、セケンはTPPモンダイに明け暮れて、2011年も逝こうとしている。なにせ、参加しなかったら、アメリカに日本製の自動車とか家電に法外な関税を掛ける口実を与えるようなもんですからな。どう考えても、“拒絶”は出来ませんな。(それに、アメリカだけでなくTPP参加国全部がそうなったら一巻の終わりだし)
だからと言って、交渉でナントカ有利なポジションを得るほどの能力が今の外務省にあるんかね。まさに前門の狼後門の虎とは、こういう状況を指すんでしょうなあ。
それはともかく。
『〔ウィジェッ...
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2011/11/18 22:54 |
混ぜるな危険
今までこのブログを読んでくれた人には分かると思うが、こと読書に関してはわたし(夷洲斎)はかなり保守的である。
若い頃は、一週間くらい昼食抜きで買った本がハズレでも、そんなこともあるさ、と笑って済ませられた……つまり時間的に余裕があったから……が、さすがに馬齢を重ねるとそうもいかない、というのがひとつ。
それに、もう自分がさして面白くないと思う書物に、集中力や体力が続かないというのがふたつ目の理由だ。
それでも、面白そうだと感じるとつい読んだこともない作家の本に手を伸ばしてしまうこと...
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2011/11/15 23:13 |
日本のSF
『小松左京セレクション1 日本』 小松左京 東 浩紀=編 河出文庫
あの大震災の時、とっさに頭を掠めたのが『日本沈没』だったのは何故なのだろう。その後に、プレート境界型の大地震で、日本列島が実際に何メートルか日本海溝に向かって“沈んだ”ことを知って、その直感がある程度符合していたことを知って、背筋が凍りつく……というより、モヤモヤした気分になったものだ。それは、8ヶ月経った今でも、完全に解消されたわけではない。
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2011/11/12 23:07 |